ダージリンやアッサムといった紅茶の名前を耳にしたことはありますか? これらは「エリアティー」または「産地紅茶」と呼ばれるもので、栽培・収穫された地域の名前がつけられています。エリアティーは全ての紅茶の基本であり、ブレンドティーやフレーバーティーの原料にもなります。
紅茶の知識を深めるにはエリアティーの理解が不可欠です。今回は、お気に入りの紅茶を見つけるためのシリーズ第3回として、「エリアティー」とは何かについてお話しします。この知識を得ることで、一気に紅茶の世界が広がり、次に飲みたいお茶を選びやすくなります。
紅茶に詳しくなりたい方、好きな紅茶を見つけたい方、香り付きの紅茶ばかり飲んでいる方、ダージリンとアールグレイの違いが分からない方はぜひ参考にしてください。
エリアティーとは
現在、世界中で30ヵ国以上が紅茶を生産しています。その中には様々な生産地が存在し、「エリアティー」とはその生産地の名称がそのまま付けられた紅茶のことです。「産地紅茶」や「オリジンティー」とも呼ばれます。
例えば、ダージリンはダージリン地方、アッサムはアッサム地方で栽培・収穫された紅茶です。エリアティーはそのまま飲むだけでなく、ブレンドティーやフレーバーティーに加工される原材料にもなります。様々な個性を持つエリアティーを組み合わせたり、香りを付けたりして多種多様な商品が作られています。
エリアティーはお茶本来の味や香りを楽しむことができます。フレーバーティーと比べると「お茶そのものの香り」しかせず、地味に感じることもあるかもしれませんが、実際には「どれも同じ」「違いがよく分からない」という意見もあります。しかし、エリアティーこそ全ての紅茶の基本です。詳しくなることで、紅茶を選ぶ際のハードルが下がります。
「どの紅茶を選べばいいかわからない」という方こそ、エリアティーを試してみてください。香り付けされていないピュアな紅茶の風味を色々と試してみてほしいと思います。
代表的な紅茶の産地とエリアティー
インド
・アッサム…インド北東部のアッサム地方で作られる紅茶の総称。
・ダージリン…インド北東部のダージリン地方で作られる紅茶の総称。世界三大紅茶のひとつ。
・ニルギリ…インド南部の西ガーツ山脈の南部で作られる紅茶の総称。
スリランカ
スリランカで生産される紅茶はまとめて「セイロン」と呼ばれます。標高によって「ハイ・グロウン・ティー」、「ミディアム・グロウン・ティー」、「ロー・グロウン・ティー」と分けられます。
・ウバ…スリランカのウバ州で作られる紅茶。ハイ・グロウン・ティーに分類され、世界三大紅茶のひとつ。
・キャンディ…スリランカのキャンディ地方で作られる紅茶の総称。ミディアム・グロウン・ティーに分類される。
・ルフナ…アラブ諸国で親しまれ、主にチャイ用の茶葉として利用される。ロー・グロウン・ティーに分類される。
中国
・キーマン(祁門紅茶)…安徽省祁門県附近で作られる紅茶のひとつ。世界三大紅茶のひとつ。
・ラプサンスーチョン(正山小種)…紅茶の茶葉を松葉でいぶしたフレーバーティーの一種で、中国福建省武夷山市周辺で作られた物を指す。
エリアティーは銘柄ごとに味や香りが異なります。何故、こんなにも多様な風味が生まれるのでしょうか。
産地によって風味が異なる理由は気候にあり
紅茶は全てチャノキ(学名カメリア・シネンシス)という植物の葉から作られます。インドやスリランカなどの紅茶の産地には多くの茶園があり、そこで育てられたチャノキの葉を収穫・加工して紅茶が作られます。
ルイボスティーやマテ茶、杜仲茶など、チャノキが原料ではないお茶は紅茶とは異なります。では、同じチャノキから取れるのに、銘柄によって風味が異なる理由は何でしょうか?
紅茶が産地ごとに独特の風味を持つ理由は、その土地の気候条件が異なるからです。チャノキの葉は栽培地域の雨量、朝晩の気温差、霧や露などの気候条件によって独特の味や香りを持つようになります。様々な環境の違いにより、地域ごとに特徴的な茶葉が育つのです。
例えば、ダージリンはヒマラヤ山麓の標高2000mを越える地域で栽培され、日中と夜間の気温差と霧が「マスカテルフレーバー」「紅茶のシャンパン」と呼ばれるフルーティーな味わいを生み出します。
同じ銘柄でもメーカーごとに味が異なる理由
同じ「アッサム」という銘柄でも、メーカーによって味が少しずつ異なります。もちろんアッサムとしての個性は維持されていますが、全く同じ味にはなりません。
その理由は、エリアティーとして販売されている商品の多くがブレンドされているからです。言わばそのメーカーの「アッサムブレンド」とも言えるものです。
紅茶の味は非常に繊細で安定しないため、同じ地域で栽培されたチャノキから作られても、細かい条件によって風味が変わります。
紅茶の風味に影響を与える要素を大まかに3つに分けて解説
細かな気象条件
紅茶は育つ地域の環境だけでなく、その年の気候によって風味が変わります。同じ生産地でも茶園ごとに風味が異なり、茶園内でもチャノキの植えられている位置が少し違うだけで風味が変わることもあります。日当たり、風向き、土壌、降雨量の違いがその理由です。
茶の木の品種
チャノキにも品種があります。中国で古くから利用されていた「中国種」、インドで発見された「アッサム種」、それらを掛け合わせた「ハイブリッド種(交雑種)」が栽培されています。同じ茶園でも複数の品種が植えられていることが多く、品種が違えば風味も異なります。
葉を摘んだ時期
葉を収穫する時期によって紅茶の味は大きく変わります。春の芽吹きの頃には柔らかい新芽が芽吹き、夏には青々と育ち、秋には葉が厚く固くなるなど、チャノキの葉が成長と共に変化するからです。
まとめ
エリアティーは紅茶の基礎知識を深めるために欠かせない存在です。産地ごとに異なる風味や特徴を知ることで、紅茶の選び方や楽しみ方が広がります。
ダージリンやアッサム、セイロンなど、それぞれの産地特有の紅茶を試すことで、自分の好みに合った紅茶を見つけることができるでしょう。同じ銘柄でも茶園や季節によって味が異なるので、色んなエリアティーを味わってみてください。
代表的なエリアティーのひとつ、ダージリンについて詳しく知りたい方はこちら